- 資格
- 歯科医師
歯学博士
弁護士
法務博士
北海道大学歯学部 非常勤講師
北海道医療大学 客員教授
厚生労働科学研究 分担研究者
国際歯科学士会(ICD)フェロー
- 略歴
-
- 1998年
- 北海道大学歯学部 卒業
- 同年
- 医療法人仁友会 日之出歯科真駒内診療所 勤務(〜2011年)
- 2007年
- 北海道大学大学院歯学研究科博士課程修了(歯科麻酔)(歯学博士)
- 2011年
- 司法試験合格
- 2012年
- 弁護士登録
- 2014年1月
- 小畑法律事務所 開設
- 2015年4月
- 北海道医療大学 客員教授(〜現在)
- 2016年11月
- 弁護士法人 小畑法律事務所 設立(札幌弁護士会)
- 2018年3月
- 弁護士法人 小畑法律事務所 横浜オフィス 設立(神奈川県弁護士会)
- 2018年9月
- 弁護士法人 小畑法律事務所東京オフィス(帝国ホテル本館内) 設立(東京弁護士会)
—中原:先生は歯科医師と弁護士のダブルライセンスですが、それぞれきっかけを教えてください。
—小畑:私は歯科医師の家系ではなく、特に歯科医師に近い存在ではなかったんです。小さい頃通っていた小児歯科では、非協力児だった様ですが(笑)、小6ごろまで通っていました。両親が薬局を経営していた影響で医療系の仕事に興味を持ったことや、絵を書いたり、何か作ったりするのが好きだったということがあって、自分には手先も使えるような仕事の歯科医師が向いてるかなあという思いから、高校2年生くらいからでしょうか、地元の北大歯学部を目指しました。
北大に入っていろいろな授業を受ける中で、これからの歯科医師は全身のわかる歯科臨床家であることが大前提だと思いました。そこで、全身管理を学びつつ、臨床もしっかりできるような診療所に勤めたいと思いました。歯学部卒業後に勤務した診療所では、一般歯科臨床はもちろんのこと、勤務しながら北大の歯科麻酔科で全身管理の研修を行い、トータルで患者を見て、リスク管理をするということを学び、実践してきました。そんな中、当時、市立札幌病院の救命救急センターで、北大歯学部の先輩の歯科口腔外科医が救急医療を行なっていたとして刑事告発されました。歯科医師が全身管理を学ぶことは非常に重要であるのに、刑事事件にまで発展してしまったわけです。結果としては、研修であっても度がすぎていたということで、最高裁までいって、当時の救命救急センター部長が有罪になったんです。裁判が行われている中で、歯科医師の医科研修のガイドラインができたり、一定程度の成果は得られましたが、歯科医師は、一時期、医科から研修受け入れを断られるなど、それまでに比べて全身管理を学ぶ場が失われてしまったんです。これ以外にも、いろいろと現場と法制度のズレを感じていましたが、当時、現場のわかる法律家がいないという現実に気づかされました。そこで、自分が法律家になろうと思ったわけです。
—中原:私も小畑先生に近いものを感じています。30年前の話ですが、私は医療過誤に興味があり、法医学で学位を取得しました。自分がアメリカで新しいことをしたいなと考えていた頃、一口腔単位でなく、一患者単位で見る真の予防医療をやりたいと当時から思っていましたので。それでもやりたいことをどこまでやっていいか疑問でしたので、慶應義塾大学の医師と弁護士のダブルライセンスの先生に相談に行ったんです。そこで法律は後から整備されてくるものなので事例のないものは先行してやっていいというアドバイスを受けました。どんなことでも新たに始めることに関しては、制度、行政の問題が必ず出てきて、既成概念によってそんなことできないと思ってしまうものです。そこで、医師法と歯科医師法の違いを素人ながらに条文を全て読んでみました。
医師法の第1条は、”医師は、医療及び保健指導を掌ることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。”
とあり、歯科医師法の第1条は、”歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。”とあります。
これを読むと、基本的に医師法の条文と歯科医師法の条文の違いは、医師や医療の前に歯科が入っているかいないかの違いで、歯科医師には領域の制限を課しています。ところが歯科医師法の公衆衛生の前には歯科がついていません。公衆衛生、つまり予防や先制医療においては、歯科領域という制限を課していないことに気づきました。
ここにボーダーがないのかと思うと同時に突破口だと考え、口腔疾患の予防から全身疾患の予防へアプローチできると思うようになりました。今後は政治も行政も関わっているし、今後の歯科医療教育にも関わってくることになります。このような発想の下で今後の予防を中心とした医療、あるいは歯科医療を構築していく場合、どうしても歯科医療の臨床と法律の両方を深く理解したブレインが必要だと思っていました。こうした背景から小畑先生と一緒に仕事したいなと思うようになったんです。医療訴訟のようなネガティブな問題解決の為の関わりではなく、新しい将来の予防を中心とした歯科医療体系の構築の為にです。
—小畑:自分自身は政治家との接点はないので、今後、政治も学びながらになりますが、医療の本来の目的を考えて、本質的に必要なものを潰さないように、政治的にもうまく土壌を耕しながら進んでいければいいなと思っています。医師も歯科医師も、それぞれの本質的な役割を理解しながら、お互い連携・共存しながら、国民に適切な医療を提供し続けられるために、無用なトラブルがおこらないように尽力できればと思っています。
—中原:1989年の開業する時に、『協立歯科』とクリニックの名前を付けたかったんですが、当時はビル名か本人の名前か地域名の3つしか医院名として付けられないと、東京都の担当者から拒否されてしまったことがあるのです。私はチーム医療を目指していたので、自分の名前でなく山口県周防大島の実家の父親の医院名、3つの力を合わせてともに発展させるという理念の下に付けられた『協立歯科』をつけたかっただけなのですが。
どうしても理由を伺いたくて自ら厚生省に出向きました。歯科衛生課長とお目にかかれたので事情を説明したら、私の命名の趣旨をご理解いただき、当時の規制の主たる理由に当たらないと判断していただけて、『協立歯科』命名の許可が下ったのです。
それから数年後に分かったのですが、ある医師会の先生から「君が中原くんかー。君のあの時の行動で、当時の規制が撤廃されて、全国でどんな名前でもつけられるようになったんだよ。医師会・歯科医師会としては君の行動は表彰ものだよ!」と言われた経験があります。
何事も信念を貫いて行動に出れば、政治・行政にまつわることも政治家でなくたって動かせることもあるんだな、と当時思いました。
—小畑:制度は、当時の背景事情から作られるものですけど、そもそもその制度を作った趣旨があるはずですよね。時代背景が変わっているのに、趣旨から外れた制度だけが一人歩きして、紋切り型の運用がされていることはたくさんあると思います。何かおかしいなと思ったら、本質に立ち戻って、よりよい法整備がなされて行ったらいいなと思っています。
—中原:まだまだ法整備をやっていくことはありますよね。デュボワで小畑先生と一緒にやっていけることが沢山あるのではないかと思います。あらゆる疾病から守りゲストを患者にしないためにチームで取り組んで行きましょう。
—小畑:そうですね。弁護士というと、なにか大きな揉め事が起きたときに、法律を駆使して何とか問題解決を図ろうとするようなイメージを持っている人が多いと思いますけど、自分はそれだけが弁護士の役割だとは思っていません。口腔の健康は身体の健康長寿の近道ですから、歯科医師としての臨床経験を生かして、ネガティブな問題解決のためではなく、多くの人たちが心身の健康を確保できるための本来的な医療に触れることができるような予防中心の歯科医療体系の構築に向けたお手伝いができればと思っています。ありがとうございます。